草薙神剣奉祀に始まる熱田神宮の由緒
名古屋市に鎮座する熱田神宮は、
三種の神器のひとつである
「草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)」を
ご神体として祀る神社であり、
その創祀は「日本武尊(やまとたけるのみこと)」と
「草薙神剣」の物語
に始まります。
尊が東征の際、草原において賊の罠に遭い、
火を放たれるという危機に陥りましたが、
叔母の倭姫命(やまとひめのみこと)から授かった
天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)で草を薙ぎ、
燧石(ひうちいし)で向い火をつけ、
窮地を脱することができました。
この時より天叢雲剣は
「草薙神剣」と称されるようになったのです。
景行天皇四十三年(一一三)に
尊は近江国伊吹山で病に倒れ、
お妃の宮簀媛命(みやすひめのみこと)の
お手許(名古屋市緑区大高町)
へ「草薙神剣」を留め
置かれたままお隠れになられました。
その後、宮簀媛命は霊威畏き
「草薙神剣」を熱田の地に祀られ、
一身を捧げて奉斎の日々を送られました。
ここに熱田神宮の創祀が開かれたのです。
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短刀 銘 来国俊 /
正和五年十一月日
(国宝)
鎌倉時代(1316)
刀長25.1cm・内反り
熱田神宮は三種の神器の一つである「草薙神剣」を
奉祀するお社であることから、
古来、各時代に亘って刀剣の奉納が
連綿となされてきました。
現在でも各方面よりの奉納が続いており、
篤い信仰の証であるといえます。
国宝・重要文化財に指定された刀剣は20口、
愛知県指定文化財は12口を数えます。
刀工の国も山城、大和、相模、
備前、筑前、美濃、尾張など
各所に及び、
その作刀時代も
古刀、新刀、新々刀、現代刀など
長期間に亘ります。
「剣の宝庫 草薙館」は、
神様に祈りと感謝を込めて捧げられた
貴重な刀剣を紹介する当神宮ならではの
刀剣展示館です。
刀剣の展示ケースは、
表裏共に鑑賞いただけるよう
ガラス張りと致しました。
また、奉納刀のなかで、
姉川の戦いで獅子奮迅の活躍をした
朝倉陣営の勇士真柄十郎左衛門父子が
所用したと伝わる通称「真柄太刀」
大太刀二口を同館内に常設展示致しております。
熱田の名刀
草薙神剣を奉斎する当神宮は、
千九百年の歴史のなかで
頻繁に刀剣の奉納がありました。
代表的な名刀を紹介します。
太刀 銘 真行(重要文化財)
平安~鎌倉時代
刀長72.7cm・反り2.1cm(伯耆)
太刀 銘 国友(重要文化財)
鎌倉時代
刀長75.8cm・反り2.2cm(山城)
太刀 銘 宗吉作(重要文化財)
鎌倉時代
刀長81.2cm・反り3.2cm(備前)
太刀 銘 備州長船兼光(重要文化財)
鎌倉時代
刀長70cm・反り1.5cm(備前)
太刀 銘 元弘三年六月一日実阿作(重要文化財)
鎌倉時代(1333)
刀長83.7cm・反り3.7cm(筑前)
脇指 無銘 〈あざ丸〉(愛知県指定文化財)
~鎌倉時代
刀長54.7cm・反り1.5cm(備前)
脇指 銘 吉光 亀王丸〈号蜘蛛切丸〉
(愛知県指定文化財)
鎌倉時代
刀長32.6cm・反りなし(山城)
脇指 銘 長谷部国信〈熱田国信〉(重要文化財)
南北朝時代
刀長40.8cm・反り0.8cm(山城)
脇指 銘 (葵紋)
奉納尾州熱田大明神〈熱田康継〉(重要文化財)
江戸時代
刀長35.2cm・反り0.6cm(武蔵)
太刀 銘 七十一翁荘司美濃介藤原直胤/
(嘉永二年二月吉日)「宮」(刻印)(愛知県指定文化財)
江戸時代
刀長70.7cm・反り1.8cm(武蔵)
真柄大太刀
真柄の大太刀は元亀元年(1570)
近江姉川の合戦で奮闘した
剛力無双の士真柄十郎左衛門直隆・
直基父子の所持と伝える豪刀二口であり、
長い方を太郎太刀、
短い方を次郎太刀と
呼び習わしている。
同仕様の外装に納まるが、
これは享保3年(1718)に拵えられたもので、
祭礼図等を繙くと渡御行列等の
威儀物(執物)として
用いられている様子が窺える。
尋常ならぬその大きさは
見る者を今なお圧倒して止まない。
大太刀 銘末之青江(太郎太刀)
刃長221.5cm 反り3.4cm 全長303cm
拵え総長340cm 刀身 約6kg(拵え含む 約10kg)
大太刀 銘千代鶴國安(次郎太刀)
刃長166.7cm 反り2.6cm 全長244.6cm
拵え総長 267cm 刀身 約5kg(拵え含む 約8kg)
・熱田神宮奉納刀の特徴
熱田神宮では現在450余口の刀剣を所蔵し、当神宮の御神体が三種の神器の一つ、「草薙神剣」であることから、御神体、また御神体に寄られる神々に祈りを捧げ奉納されたものです。
奉納者は為政者から篤志家まで多岐にわたりますが、御神体・御祭神に対するその思いは変わらぬものであったと思われます。また、長谷部国信や越前康継をはじめ、刀工自身が自らの技倆を照覧頂くために神前に参篭して鍛え、奉納された刀剣も多く所蔵されています。
また特筆されるのが、「切付銘」と称される刀身に刻まれた奉納銘が多く遺されていることです。いつからこのような奉納銘が刻まれるようになったのかは詳らかではありません、研磨により磨滅したものもありますが古くは、応永年紀のものが確認できます。また、当神宮では江戸時代まで七月七日に「神宝風入」という宝物の風通しの神事があったことから、同日奉納銘が多いのも見どころの一つ、史料的にも価値のある刀剣です。
この度、令和の御代替わりを記念した、熱田神宮御大典奉祝記念事業の一環である「剣の宝庫 草薙館」が10月3日に開館致しました。この草薙館は約三年間に亘る奉祝記念事業の結びとなるもので、古くより祈りと感謝を込めて神様に捧げられた数多くの刀剣類を展示する専門施設です。 この機会に「剣の宝庫 草薙館」を是非とも拝観いただき、当神宮をより深くご理解頂ければ幸いです。
12月 刀剣展「山陽道の刀剣」令和6年11月27日(水)~12月24日(火)
・主な展示品
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重要文化財
太刀 銘 宗吉作 (備前)
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刀 無銘 (備前)
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短刀 銘 備州長船住光長 (備前)
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短刀 銘 備州長船利光/
応永卅四年二月 (備前) -
太刀 銘 助次 (備中)
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太刀 銘 備中□□住吉次/
応長□年 (備中) -
太刀 銘 備中国青江頼次作/
元亨二壬戌月日 (備中) -
刀 銘 金象巌銘「三原」 (備後)
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短刀 銘 正家 (備後)
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脇指 銘 無銘 (備後)
ご利用案内
年間共通パスポートのお知らせ
頒価5,000円
(宝物館、草薙館の受付にてお申し込みください。)
・拝観料金・開館情報
・草薙館単館券
大人500円(400円) 小中生200円(100円)
・宝物館共通券
大人800円(700円) 小中生300円(200円)
※但し宝物館において特別展等開催時の共通券拝観料金は変更される場合があります。
開館時間は午前9時から午後4時半まで(最終入館は午後4時まで)
※但し宝物館との共通券最終頒布は午後3時30分となります。